不治の病を無くしたい
わが家のアイドル
わが家の子どもたちはとても動物好き。 しかし、父親である主人はカブトムシ以外は受け付けない人。
長男はペットを迎えることを泣く泣く諦めたが、5歳下の娘は諦めない。 1年越しで父親を説得した。
大歓迎というわけではなく、受け入れにはいくつも条件がつけられた。
それでも、8歳の娘はこの先ずっとサンタさんが来なくてもいいからわんちゃんを迎えたいと頑張った。
動物愛護センターや盲導犬訓練所のパピーウォーカーなど学んだり、映画や書籍などありとあらゆることを学びながら迎えたのが、ミニチュアダックスのラブだ。当初別の犬種を探していたのに、ラブを見かけて、抱っこして子どもたちとこのコだと決まった。
名前は受け入れを反対していた主人が名付けた。そんな会話をしていました。
犬との暮らし
憧れの愛犬を迎えたものの、パピーは手強い。
そして犬は人間関係も見極める。
娘は予想以上にお転婆なラブに手を焼き、犬のしつけ教室にも通うようになった。
当時単身赴任で犬が苦手な主人にも帰宅すると挨拶するラブ。
お兄ちゃんが大好きでたまらないラブ。
娘のことを親友のように慕うラブ。
お世話係りとして私を信頼するラブ。ラブは家庭の中心。
思春期になり親に話しかけなくなった息子の話し相手になり、留守番をする娘の相棒となり、どんな時も一緒に過ごす大切な家族の一員となった。
異変
私たち家族はラブを連れて、県外への旅行を計画した。
車酔いしがちなラブのために酔い止めの薬も用意した。
そんな最中に嘔吐を繰り返すようになった。
近所のかかりつけ医は胃腸薬を処方するばかりだったが、胸騒ぎがして検査を依頼した。
すると、レントゲン検査でお腹に腫瘍らしきものが見つかった。
より詳しい検査をするためには、他県の大学病院へ行くか、近隣の設備のある病院で3カ月待ちをするか。3カ月も待てる訳がない。
私たちは犬仲間からの情報を参考にセカンドオピニオン、サードオピニオンまで受けた。
結果、どの病院でも、ラブのお腹にある腫瘍は悪性で生命に関わると告げられた。
生命の選択
まだ2歳のラブなのに、どこの病院へ行っても生命の危険性を告げられてしまう。
早くなんとかしなくては、と気持ちばかり焦る。
手術をするに辺り、人間同様CTやMRIなど全身麻酔での検査の必要だ。
様々な選択を迫られる中で、セカンドオピニオンをお願いした病院から電話があり、腫瘍は悪性と分かっているのだから検査を待つより先に摘出しましょうと説明を受け、翌日に手術を決めた。
摘出した腫瘍は握りこぶし大。腫瘍は消化管を圧迫して壊死しかけており、三分の二ほど消化管も切除したと告げられた。
主治医の想定以上に悪く、病理検査では悪性リンパ腫と告げられた。
人間でも不治の病であり、余命1〜3カ月。場合により安楽死の提案をせざるをえないかもしれないと告げられた。
まだ2歳で、これからたくさん一緒にやりたいことがあるのに。涙が溢れた。直ぐにラブを抱きしめたいと思う私を主治医が制止した。
犬はとても敏感で、私たちの哀しみの感情を察知するから笑顔で面会するようにと。
術後で痛々しいながらも私たちの姿をみて必死に尻尾を振ろうとするラブ。ラブのリンパ腫は当時まだ学会症例報告すらないものだった。
日本で稀に確認されるようになった若齢のミニチュアダックス特有の珍しいタイプのリンパ腫だった。
信じて!!
退院後、今後の治療について考えた。
リンパ腫、いわゆる血液癌は完治しない。完治しないと知りつつ抗がん剤治療をして苦しませてよいのか。
しかも、リンパ腫には様々なタイプがあるがラブのリンパ腫は異例で飽くまでも標準治療だ。
私ならどうするだろう。苦しいだけの人生は嫌だ。短くても痛みのない時間を過ごしたい。そうだ、緩和ケアしかないと思い、子どもたちに相談をした。
金銭的に高額になることも伝えた。2人とも、ラブはまだ生きたがっている、ラブを信じて助けてほしい、前向きな治療を受けさせてほしいという。
子どもたちの願いを主治医に託した。余命3カ月のラブは丸8年経った今も私たちと一緒にいる。
もちろん再燃も繰り返し、苦しい時期も乗り越えてきた。
そして、ラブを根気強く迎えた娘は不治の病を根絶したいという使命感のもと医学の道を志し大学に進学した。
私はラブの生きてきた証をインスタグラムに投稿し当時絶望した私たちのような方々に希望を持ってもらうことを願っている。
ペンネーム yyさん
宮城県在中。50代。